前回の記事では、
「レントゲンやMRIで異常がないのに痛い理由」
について、筋肉・筋膜・トリガーポイントの視点から解説しました。
その中で登場した、
「筋筋膜性疼痛症候群(MPS)」
という言葉。
今回は、
・坐骨神経痛
・五十肩
・頭痛
・股関節痛
など、多くの慢性痛とも関係するMPSについて、トリガーポイントとの関係も含めて詳しく解説します。

トリガーポイント鍼灸院feel院長の佐野です。
「整形外科でレントゲンやMRIを撮ったけれど異常なしと言われた」
「坐骨神経痛や五十肩と言われ、湿布や痛み止めを続けているが、なかなか良くならない」
このような長引く痛みに悩まされていませんか?
実は、レントゲンやMRIといった画像検査では写りにくい、
「筋肉」や「筋膜」
の異常が、痛みの原因になっているケースがあります。
このように、筋肉や筋膜のトラブルによって起こる慢性的な痛みの病態を、筋筋膜性疼痛症候群(MPS)と呼びます。
英語では、
Myofascial Pain Syndrome
と言い、
・Myo=筋肉
・Fascial=筋膜
・Pain=痛み
つまり、
「筋肉・筋膜由来の痛み」
という意味です。
MPSとはどのような状態なのか?
MPSを簡単に言うと、
「筋肉の一部が異常に緊張し、痛みを発生させている状態」です。
・長時間の同じ姿勢
・過度な負荷
・日常のストレス
身体の使い方の偏りなどによって筋肉へ負担がかかり続けると、筋肉の一部が硬く縮こまり、
・血流低下
・酸素不足
・疲労物質蓄積
などが起こります。
すると、トリガーポイントと呼ばれる、「痛みの引き金」となる過敏なポイントが形成されることがあります。
MPS最大の特徴「関連痛」
トリガーポイントの最も特徴的な性質が、関連痛です。
これは、
「原因の場所」と「痛い場所」が違う
という現象です。
例えば、
お尻の筋肉
→ 足へしびれや痛み
首の筋肉
→ 頭痛・目の奥の重さ
肩甲骨周囲の筋肉
→ 肩関節の痛み
など。
つまり、「痛い場所」=「原因」とは限りません。
このため、
「腰が痛いから腰だけ」
「肩が痛いから肩だけ」
を施術しても、改善しにくいことがあります。
坐骨神経痛だと思ったらMPSだった
これは実際によくあるケースです。お尻の奥にある、
・梨状筋
・中臀筋
・小臀筋
などにトリガーポイントが形成されると、「坐骨神経痛のような症状」を出すことがあります。
例えば、
・お尻〜太ももが痛い
・足へ響く
・長時間座れない
・歩くと重だるい
・足がしびれる感じがする
など。
しかし実際には、神経そのものではなく、筋肉由来の関連痛であるケースも少なくありません。
もちろん、
・筋力低下
・感覚障害
・排尿障害
などがある場合には、医療機関での検査が必要です。
五十肩とMPSの関係
五十肩(肩関節周囲炎)でも、関節だけではなく、
・棘上筋
・棘下筋
・肩甲下筋
・小円筋
など、肩周囲の筋肉・筋膜が強く緊張しているケースがあります。
特に、
・腕が上がらない
・夜間痛がある
・動かすと鋭く痛む
といった症状では、筋筋膜性の問題が関与していることがあります。
関節だけではなく、「周囲の筋肉・筋膜」を見ることも非常に重要です。
頭痛と首・肩のトリガーポイント
慢性的な頭痛、特に緊張型頭痛では、首や肩の筋肉が大きく関係していることがあります。
例えば、
・後頭下筋群
・頭板状筋
・頸板状筋
・僧帽筋
・胸鎖乳突筋
など。
これらの筋肉へトリガーポイントが形成されると、
・後頭部痛
・こめかみ
・目の奥
・頭重感
などを出すことがあります。
また、筋膜の連続性という観点からも、首・肩周囲の筋緊張が、頭部へ影響を与えることが知られています。
股関節痛と中臀筋
股関節痛でも、実際には関節だけでなく、中臀筋など、股関節周囲の筋肉が原因になっていることがあります。
特に、
・歩くと痛い
・階段がつらい
・横向きで寝られない
・片脚立ちで不安定
などのケースでは、中臀筋へ過剰な負荷が集中していることがあります。
つまり、「股関節そのもの」だけでなく、「股関節を支える筋肉」を見る必要があります。
レントゲンやMRIでは分かりにくい
ここは非常に重要です。
MPSは、
・骨折
・ヘルニア
・変形
のような構造異常ではありません。
そのため、レントゲンやMRIでは分かりにくいことがあります。
つまり、「異常なし」=「問題なし」とは限りません。
もちろん、画像検査は非常に重要です。
しかし、画像だけでは説明できない痛みに、「筋肉・筋膜由来の問題」が関係しているケースがあります。
身体は「部分」ではなく「つながり」近年では、筋膜(ファシア)への注目も高まっています。
筋膜は、筋肉や内臓を包み、全身を連続的につないでいる組織です。
つまり身体は、「部分」ではなく、「つながり」として考える必要があります。
例えば、
・呼吸
・股関節
・胸郭
・足部
などが、肩こりや腰痛へ影響していることもあります。
局所だけでなく「身体全体の機能」を踏まえたアプローチを
痛む場所だけをマッサージしても、一時的に楽になるだけで戻ってしまうケースは少なくありません。
なぜなら、筋膜は頭から足先まで連続しており、「別の場所にあるトリガーポイント」が真の原因になっていることがあるからです。
当院では、
・トリガーポイント
・深部筋
・筋膜ライン
・姿勢
・動作
・身体全体の連動
を含めて評価しています。
特に慢性痛では、「どこが痛いか」だけではなく、「なぜそこへ負担が集中したのか」に注目することが重要です。
また鍼治療では、深部筋(手では届きにくい筋肉)・痛みを再現するポイントへ直接アプローチしやすい特徴があります。
「もう歳だから」と諦める前に
慢性的な痛みでは、「骨が変形しているから仕方ない」と言われることも少なくありません。もちろん、加齢変化そのものを無くすことはできません。
しかし、周囲の筋肉・筋膜の状態を改善することで、
・動きやすさ
・痛み
・日常生活動作
が変化するケースは多くあります。
まとめ
筋筋膜性疼痛症候群(MPS)とは、「筋肉や筋膜が原因となって起こる慢性的な痛み」です。
そして、
・坐骨神経痛様症状
・五十肩
・頭痛
・股関節痛
・肩こり
・腰痛
など、多くの症状に関係していることがあります。
慢性的な痛みでは、「痛い場所」だけでなく、「どの筋肉が原因になっているのか」を評価することが非常に重要になります。
=佐野 聖(さの ひじり)/ はり・きゅう・マッサージ治療院 feel 院長=
1995年、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師(国家資格)取得。整形外科勤務を経て臨床経験を積み、2003年に横浜にて「はり・きゅう・マッサージ治療院 feel」を開業。
筋筋膜性疼痛症候群(MPS)、トリガーポイント、筋膜へのアプローチを専門とし、肩こり・腰痛・坐骨神経痛・五十肩・頭痛など、慢性的な痛みに対する施術を行っている。
局所だけでなく、筋膜のつながりや身体全体の機能評価を重視し、解剖学・運動学をベースにしたトリガーポイント鍼治療を臨床で実践。
過去には、トリガーポイント治療に関する臨床や技術について、鍼灸専門誌『医道の日本』に特集掲載された。
