神奈川県横浜市で「はり・きゅう・マッサージ治療院 feel」を営んでおります、院長の佐野聖です。
私たちは日々の診療の中で、肩こりや腰痛といった慢性的な痛みの多くが、実は筋肉やそれを包む「筋膜」に原因があることに着目しています。その中でも、特に効果の高いアプローチとして専門的に行っているのが「トリガーポイント鍼治療」です。
「トリガーポイント」という言葉を初めて耳にする方も多いかもしれません。今回は、この治療法がどのような仕組みで痛みを解消するのか、最新の筋膜研究の知見を交えてわかりやすく解説します。

1. 痛みの引き金「トリガーポイント」とは?
「トリガーポイント」とは、直訳すると「痛みの引き金になる点」という意味です。 筋肉の中にできた「硬いしこり」のようなもので、そこを押すと独特の鋭い痛みを感じたり、あるいはそこから離れた場所にまで痛みが響いたりするのが特徴です。
長時間の同じ姿勢や、繰り返される動作による筋肉のオーバーユース(使いすぎ)は、筋膜の「滑走性(滑りの良さ)」を低下させ、組織を厚く、硬くさせてしまいます。これが慢性的な痛みの前兆となり、トリガーポイントが形成される要因となります。
2. なぜ「鍼(はり)」が筋膜に効くのか
最新の医学研究(筋膜学)では、筋膜には豊富な神経(受容器)が存在し、物理的な刺激に対して非常に敏感に反応することがわかっています。
トリガーポイント鍼治療には、主に以下の3つのメカニズムがあると考えられています。
メカノトランスダクション(機械的刺激の変換) 鍼による物理的な刺激(刺入や回転)が加わると、細胞レベルで反応が起こり、炎症を抑えたり組織を修復したりするプロセスが始まります。
筋膜の滑走性の回復 硬くなって癒着した筋膜層に鍼で刺激を与えることで、組織間の滑りを助けるヒアルロン酸などの潤滑機能に影響を与え、滑らかな動きを取り戻します。
血流の改善と発痛物質の除去 トリガーポイントの周囲は酸欠状態になり、痛み物質が蓄積しています。鍼の刺激は血流を促進し、これらの物質を洗い流すサポートをします。
3. 全身のつながりを捉える「アナトミー・トレイン」の視点
私たちの治療院では、痛む場所だけを見るのではなく、「身体全体のつながり」を大切にしています。 筋膜は、頭の先から足の先まで「アナトミー・トレイン(筋筋膜経線)」と呼ばれるラインでつながっています。
例えば、「膝の痛み」の原因が、実は腰や背中の筋膜の硬さに由来していることも少なくありません。
スーパーフィシャル・バック・ライン(背面のライン): 足底から頭頂までを繋ぎ、姿勢の維持に関わります。
スパイラル・ライン(らせんのライン): 身体をねじる動きに関与し、全体のバランスを整えます。
このように、トリガーポイント鍼治療では、全身の筋膜ネットワークを考慮しながら、痛みの本当の「原因」を探り当て、アプローチしていきます。
まとめ
慢性的な痛みは、「身体が適応しようとして限界に達したサイン」でもあります。 トリガーポイント鍼治療は、単なる痛み止めではなく、筋肉や筋膜が本来持っている「柔軟性」と「復元力」を取り戻すための呼び水となります。
一度ご自身の筋肉や筋膜の状態に目を向けてみてはいかがでしょうか。
私たちは、皆さまが健やかな毎日を取り戻せるよう、精一杯サポートさせていただきます。
=筆者:佐野 聖(さの ひじり)/ はり・きゅう・マッサージ治療院 feel 院長=
1995年、鍼灸マッサージ師(国家資格)取得。整形外科勤務を経て臨床経験を積み、2003年に横浜にて「はり・きゅう・マッサージ治療院 feel」を開業。
これまでの臨床の中で、痛みの多くが筋肉や筋膜に由来することに着目し、筋筋膜性疼痛症候群(MPS)およびトリガーポイントに特化した治療を専門としている。
肩こり・腰痛・坐骨神経痛・五十肩・頭痛など、慢性的な痛みに対して、局所だけでなく身体全体の機能を踏まえたアプローチを行い、改善をサポートしてきた。
その治療技術と臨床経験は、鍼灸専門誌『医道の日本』において特集掲載されている。
