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鍼灸専門治療院 feel横浜本院 院長ブログ
2026年02月27日

恒常性と筋肉のコリ ― なぜ一度よくなっても戻るのか ―

肩こり
腰痛
鍼治療
MPS・筋筋膜性疼痛症候群

トリガーポイント専門院 鍼灸院feel横浜 院長の佐野です。

施術直後は軽くなる。
しかし数日から数週間で再び張りや痛みが戻る。

これは施術が良くなかったというより、生体の恒常性(ホメオスターシス)と適応反応の結果と考える方が妥当です。



恒常性とは何か

恒常性とは、生体が内部環境を一定範囲に保とうとする生理学的調整機構です。

体温・血圧・血糖・水分バランスなどは代表例ですが、筋緊張や自律神経活動も神経系によって常に調整されています。

外部から変化が加わると、生体はそれを修正し、元の状態に近づけようとします。

これは正常な生理反応です。




慢性的なコリは「局所の問題」だけではない

慢性的な筋の張りや痛みは、以下の複合で生じます。

・長時間の同一姿勢
・精神的ストレス
・睡眠不足
・運動不足
・呼吸機能の低下
・過去の外傷

筋が持続的に収縮すると、局所血流が低下し、代謝産物が蓄積しやすくなります。

トリガーポイントに関しては、神経筋終板の過活動や局所代謝負荷が関与するモデルが提案されていますが、単一の機序で説明できるわけではありません。
(統合仮説の段階であり、完全な解明には至っていません。)



なぜ「戻る」のか

1. 神経系の適応(運動制御の固定化)

慢性痛では、

・脳・脊髄レベルでの感作
・運動制御パターンの変化
・筋活動タイミングの再編

が生じることが知られています。

これは「セットポイントが間違っている」というより、生体がその状態に適応してしまっている。
と表現する方が正確です。

*セットポイント:体温など含め、だいたいこれくらいを保とうというポイント、筋肉で言うとこのくらいの硬さでいようねというポイント。



施術で一時的に筋緊張が下がっても、中枢神経系の出力パターンが変わっていなければ、元の筋活動様式へ戻りやすくなります。



2. 負荷環境が持続している

施術後も、

・同じ座り姿勢
・同じデスク環境
・同じ睡眠習慣
・同じストレス負荷
が続けば、生体は再び同じ筋活動を選択します。

筋は命令に従うだけです。
入力(環境・習慣)が変わらなければ、出力も変わりません。


3. 自律神経の変動

慢性痛患者では交感神経活動が亢進している報告もありますが、これは全例に当てはまるわけではありません。

ただしストレス負荷が高い状況では、

・交感神経優位
・末梢血管収縮
・筋緊張上昇
・睡眠質低下

が起こり得ます。

施術によって副交感神経活動が一時的に高まることはありますが、生活内ストレスが持続すれば再び変動します。







継続施術の重要性

継続が必要なのは「依存させるため」ではありません。

生体適応を考えると、

・神経系の出力再調整
・運動パターンの再学習
・局所循環の安定化
・痛覚処理の変調改善
・には時間が必要です。

単回介入は症状緩和には有効でも、長期的な安定には

・生活負荷の調整
・運動療法
・睡眠改善
・ストレス管理

との併用が重要です。


改善経過の一般的傾向

慢性例では、

初期:戻りやすい
中期:戻るまでの期間が延びる
後期:症状が軽く安定
維持期:メンテナンス中心

という経過をとることが多いですが、
個人差は大きく、一概には言えません。




まとめ

コリが戻るのは、

・生体が正常に働いている証拠でもある
・しかしその適応状態が慢性化しているだけ
・施術は「一時的な緩和」だけでなく、神経・筋・環境の相互作用を再調整する介入です。

正しい運動を取り入れ、ある程度定期的な施術を受けて、筋肉に柔らかい状態がセットポイントだと再認識させることが、安定的な良い状態を保つ秘訣となります。

ただし、医学的に重要な症状がある場合は別です。

・強い夜間痛
・進行性のしびれや脱力
・発熱や体重減少
・外傷後の急激な痛み

これらがある場合は、医療機関の指示に従うようにしてください。


=筆者:佐野 聖(さの ひじり)/ はり・きゅう・マッサージ治療院 feel 院長=
1995年に鍼灸マッサージ師(国家資格)を取得し、整形外科勤務からキャリアをスタートしました。臨床の現場で数多くの症例に携わる中で、痛みの多くが筋肉や筋膜に由来することに注目し、2003年に横浜で「はり・きゅう・マッサージ治療院 feel」を開業。筋筋膜性疼痛症候群(MPS)やトリガーポイント治療を専門に、肩こり・腰痛・坐骨神経痛・五十肩・頭痛など、慢性的な痛みに取り組んできました。
その治療技術や臨床経験は、鍼灸専門誌『医道の日本』でも特集として紹介されています。



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