鍼灸マッサージ治療院 feel 院長の佐野です。
先日、当院に来院されたのは、70代の男性。
「昨日から急に腕が上がらない」とのこと。詳しくお話を伺うと、前日に旅行用のトランクを引いて長時間歩いていたそうです。
具体的には、腕を上げようとすると肩の前側に痛みが走り、特に食事の際に“箸で口元へ運ぶ”という、最後の手首を返す動作ができないという状態でした。
当初ご本人は「肩を痛めたのではないか」と思っていたようですが、詳しく診させていただいたところ、実際には上腕二頭筋に形成されたトリガーポイントが原因であると判断しました。
◆ 痛みの原因は「引く動作」の繰り返し
身体の状態を確認したところ、原因は以下のように考えられました:
長時間、肩関節を伸展させたまま肘を曲げてトランクを引く動作を繰り返したことで上腕二頭筋(特に長頭・短頭)に過度な負担がかかり結果として、筋肉内にトリガーポイント(筋硬結)が形成され、痛みとして出現したと推測されます。

◆ 鍼と低周波によるトリガーポイント治療
初回の施術では、上腕二頭筋の長頭・短頭のトリガーポイントへ鍼をアプローチし同時に低周波パルス治療を併用、このアプローチにより、2回の施術で症状は約9割改善。
3回目では、拮抗筋である上腕三頭筋や前腕のサポート筋も緩めることで、さらに動作の滑らかさが向上しました。
現在は、1ヶ月後の経過観察を予定しており、3回目の時点でほぼ痛みは消失していると考えられます。
◆ 症状が軽いうちの受診がカギ
今回の早期改善の大きな要因は、痛みを感じた“翌日”にご来院されたことです。
トリガーポイント由来の痛みは、慢性化する前に処置することで、短期間での回復が望めます。
◆ 普段と違う動きが身体に負担をかけることも
いつもと違う環境や動作は、身体にとって意外なストレスになることがあります。
たとえば、荷物を長時間引いたり、普段は行わない姿勢や反復動作を繰り返すことで、特定の筋肉に負担がかかり、トリガーポイントが形成されることがあります。
その結果、肩や腕の痛み、動かしづらさ、日常動作の不便などが生じることも。
症状が軽いうちに適切なケアを行うことで、早期の改善が期待できます。
違和感を感じたら、ぜひお早めにご相談ください。
追記:3回の治療後から痛みは消失し、痛みのない生活に戻られました。
『この記事の執筆者:佐野 聖(はり・きゅう・マッサージ治療院 feel 院長)』
佐野聖は1995年に鍼灸マッサージ師(国家資格)を取得。8年間にわたり整形外科クリニックに勤務し、医師との連携による臨床経験を重ねたのち、2003年に横浜にて鍼灸マッサージ治療院「feel」を開院しました。
筋筋膜性疼痛症候群(MPS)やトリガーポイントによる痛みやコリの治療を専門とし、肩こり・腰痛・坐骨神経痛・五十肩・頭痛など、多岐にわたる慢性症状の改善を得意としています。
その治療技術は、鍼灸専門誌『医道の日本』にも紹介されており、エビデンスと経験をもとに、患者様一人ひとりの痛みの本質に迫る施術を行っています。