トリガーポイント鍼灸院 feel 横浜 院長の佐野です.
今回は、関節や腱の近くにできて悪さをするあいつの話です。
■ ガングリオンとは何か
ガングリオンとは、関節や腱鞘まわりにできる ゼリー状の滑液が袋状にたまった腫瘤 のことです。
足首・足背・手首などでよく見られ、押すとコリッとした感触があります。
ガングリオンそのものは良性で、自然に小さくなることもありますが、繰り返し現れたり、痛みや動作時の不快感を伴うケース が少なくありません。
そして、あまり知られていないのが、
『ガングリオンは単独で突然できるのではなく、周囲の筋・筋膜の負荷が背景にあることが多い』
という点です。
■ ガングリオンが現れやすくなる背景
筋・筋膜に負荷が続くと...
- 微細な循環不全
- 筋膜の滑走不全
- トリガーポイント形成
- 組織の張力バランスの乱れ
が生じます。
これにより 滑液が局所に貯留しやすい状況 が生まれ、その結果として ガングリオンが現れるケースが多くあります。
特に足首〜足背では、前脛骨筋の機能不全がガングリオン形成の背景として関与する ことがよくあります。
■ 実際の症例:階段を降りるときの痛み
ここからは、実際に当院へ来られた症例をご紹介します。
患者さんは、足首の前面〜足背にガングリオンがあり、特に 階段を降りる動作で痛みが出る という訴えで来院されました。
ガングリオンの部位を押すと痛みはありますが、動作時の痛みを再現できたのは 前脛骨筋のトリガーポイントでした。
前脛骨筋は...
- つま先を引き上げる
- 足首を安定させる
- 足背の張力バランスをとる
という役割を持つため、ここに負荷が蓄積すると 足首だけでなく足背全体に影響が及びます。
■ 治療:前脛骨筋のトリガーポイントへ刺鍼
評価で再現痛が生じるポイントを特定し、前脛骨筋のトリガーポイントへ刺鍼しました。
刺鍼後は筋の緊張が緩和し、動作時の痛みも明らかに軽くなりました。

青:前脛骨筋
赤:長趾伸筋も足首のガングリオンの原因となることが多い
■ 結果:階段の痛みが一度の施術で7割軽減
施術直後に階段動作を確認すると、痛みは約7割軽減。
ガングリオンの大きさが即座に変わるわけではありませんが、形成の背景となる筋・筋膜の負担が改善すると症状は大きく軽減することがわかる典型例です。
■ ガングリオン=“そこだけの問題”とは限らない
ガングリオンは見た目の印象が強いため局所に原因があるように感じますが、実際には 足首・足背・下腿全体の筋膜性ストレスの結果として現れる ことが多いものです。
- 押すと痛い
- 動作時に痛い
- 再発しやすい
こうしたケースでは、ガングリオンの背景となる筋・筋膜の評価が不可欠です。
症状でお困りの場合は、早めにご相談ください。
ガングリオンそのものよりも、「なぜそこに貯留しやすい状態が生まれているのか」を整えることが改善の鍵になります。
=筆者:佐野 聖(さの ひじり)/ はり・きゅう・マッサージ治療院 feel 院長=
1995年に鍼灸マッサージ師(国家資格)を取得し、整形外科勤務からキャリアをスタートしました。臨床の現場で数多くの症例に携わる中で、痛みの多くが筋肉や筋膜に由来することに注目し、2003年に横浜で「はり・きゅう・マッサージ治療院 feel」を開業。筋筋膜性疼痛症候群(MPS)やトリガーポイント治療を専門に据え、肩こり・腰痛・坐骨神経痛・五十肩・頭痛など、慢性的な痛みに取り組んできました。
その治療技術や臨床経験は、鍼灸専門誌『医道の日本』でも特集として紹介されています。