筋膜・トリガーポイントの鍼灸マッサージ治療院 feel 院長の佐野です
今日は、産後の女性にみられる、腹直筋解離について当院での症例のお話です。
■ 腹直筋解離とは
腹直筋解離とは・・・
お腹の中央にある「白線(はくせん)」という結合組織が伸び、左右の腹直筋が離れてしまう状態です。
特に産後の女性に多く見られ、
お腹のぽっこり感
体幹の不安定さ
力が入りにくい感覚
などが特徴です。
重要なのは、筋肉が断裂しているわけではなく、
中央の支持構造の張力が低下している状態であるという点です。

■ 症例概要
30代女性(産後)
主訴:お腹の膨らみ・力の入りにくさ
評価:臍周囲で指3本以上の離開
腰部の不安定感あり
■ 施術内容
本症例では、以下のアプローチを行いました。
● 鍼灸治療
腹部(腹直筋・腹横筋周囲)、肋骨周囲、骨盤周囲に対して施術
● 干渉波
腹部に対して電気刺激を加え、神経筋制御の改善を目的に実施(電気刺激といっても、ビリビリ痛いものではなくマッサージされているような気持ちの良い感覚です)
■ 経過と変化
2週間に1度5回の施術により、
離開幅:指3本 → 約1〜1.5本程度
腹部の張力(テンション)改善
お腹の突出感の軽減
腰の安定感向上
主観・客観ともに、約8割程度の改善が認められました。
■ なぜ改善したのか
本症例の改善は、構造そのものの変化というよりも、機能的な再構築による影響が大きいと考えられます。
主な要因は以下の通りです。
① 筋バランスの是正
腹直筋や外腹斜筋の過剰な緊張が抑えられ、
腹横筋などの深層筋が働きやすい状態に変化しました。
その結果、腹壁全体の張力が均等化し、
白線への局所的な負担が軽減されたと考えられます。
② 神経筋制御の改善
鍼刺激および干渉波により、
・筋収縮のタイミング
・力の入り方
が再調整され、体幹の安定性が向上しました。
特に腹横筋の適切な活動が回復したことは大きな要因です。
③ 呼吸パターンの変化
横隔膜の動きが改善したことで、
・前方へ集中していた腹圧が分散
・腹圧のコントロールが向上
結果として、白線へのストレスが減少しました。
④ 防御的な緊張の低下
違和感や不安定感が軽減したことで、
無意識の過剰な力み(ブレーシング)が減少。
これにより、腹壁の不均等な張力が改善されました。
■ 当院での考え方
腹直筋解離に対しては、局所の幅だけで評価するのではなく、呼吸・筋活動・神経制御を含めて評価することが重要です。
単に鍛えるのではなく、適切に使える状態を作ることが改善の鍵になります。
またご自宅で行っていただくエクササイズも指導させていただきますので、少しずつ頑張ってください。
腹直筋解離でお悩みの方は、いちどご相談ください。
=筆者:佐野 聖(さの ひじり)/ はり・きゅう・マッサージ治療院 feel 院長=
1995年、鍼灸マッサージ師(国家資格)取得。整形外科勤務を経て臨床経験を積み、2003年に横浜にて「はり・きゅう・マッサージ治療院 feel」を開業。
これまでの臨床の中で、痛みの多くが筋肉や筋膜に由来することに着目し、筋筋膜性疼痛症候群(MPS)およびトリガーポイントに特化した治療を専門としている。
肩こり・腰痛・坐骨神経痛・五十肩・頭痛など、慢性的な痛みに対して、局所だけでなく身体全体の機能を踏まえたアプローチを行い、改善をサポートしてきた。
その治療技術と臨床経験は、鍼灸専門誌『医道の日本』において特集掲載されている。