
病院でレントゲンやMRIの検査を受け、「異常はありません」と言われた。それでも腰が痛い、腕に響く、背中が重苦しい。
大きな異常が見つからなかったことに安心しても、痛みが続いていれば「では、何が痛んでいるのだろう」という疑問は残ると思います。
画像検査では、骨や椎間板、神経の圧迫など、さまざまな組織の状態を調べられます。ただ、痛みを生じさせる変化のすべてが画像に写るわけではなく、筋肉や筋膜から生じる痛みも、その一つです。
神経が痛みを伝えていても、発生源はさまざま
腕や脚に痛みが広がると、「神経の問題だろうか」と考える方もいると思います。
ここで分けて考えたいのが、神経が痛みの情報を伝えることと、神経そのものの障害によって痛むことです。
例えば、足首をひねったときの痛みや、運動後の筋肉痛でも、神経は情報を伝えています。この場合、痛みの出発点となっているのは、傷めた組織や運動した筋肉です。
皮膚や筋肉などには、強い圧力や熱、炎症に伴う化学物質などを感知する「侵害受容器」があり、その情報が脊髄や脳へ伝わることで痛みが生じます。こうした痛みが「侵害受容性疼痛」です。一方、帯状疱疹後神経痛など、感覚を伝える神経系の病気や損傷から生じる痛みは「神経障害性疼痛」と呼ばれます。
神経は痛みを伝える役割を担っていますが、その出発点には筋肉・筋膜、関節、内臓などがあります。
痛む場所と、痛みの発生源が離れる「関連痛」
痛みを分かりにくくするのが、発生源から離れたところに痛みを感じる「関連痛」です。
よく知られている例に、心臓の病気による関連痛があります。心筋梗塞では、胸に加えて腕や肩、背中、顎などに痛みや不快感が現れることがあります。腕が痛んでいても、腕そのものが発生源とは限らないのです。
筋肉からも関連痛は生じます。首や肩の筋肉への刺激が腕に響いたり、お尻の筋肉への刺激で脚に痛みを感じたりすることがあります。
痛みが腕や脚へ広がるという点では似ていても、神経の障害による痛みと、筋肉からの関連痛では成り立ちが異なります。
なお、突然の胸や腕、背中の痛みに、息苦しさや冷汗などが伴う場合は、救急受診が必要です。
筋肉だけでなく、筋膜も痛みを生じる
久しぶりにスクワットをした翌日、椅子に座ると太ももが痛む。階段を下りるたびに脚に響く。筋肉から生じる痛みは、身近なものだと思います。
筋肉を包み、その間を隔てる筋膜にも感覚を伝える神経が分布しており、筋膜自体が痛みの発生源になります。
健康な人の腰の筋肉と胸腰筋膜に、痛みを起こす化学的な刺激を加えた研究では、どちらからも痛みが生じ、筋膜への刺激では筋肉より長く続く痛みや、広い範囲への広がりが確認されています。
こうした筋肉・筋膜の痛みは、一般的なレントゲンやMRIだけで発生源を特定できないことがあります。画像検査に加えて、どの動作で痛むか、姿勢によってどう変わるか、触れたときにどのような反応が出るかを調べていく必要があります。
筋肉から広がる痛みと、トリガーポイント
筋肉に関係する痛みを考える際に、当院が着目しているのがトリガーポイントです。
トリガーポイントは、筋肉の硬い帯状の部分に認められる、刺激に敏感な点として捉えられています。その場所の痛みに加え、離れた部位に関連痛を引き起こすことがあります。
例えば、腕の痛みに対して首や肩の筋肉を調べるのは、筋肉ごとの関連痛の広がりや、腕を動かす際の働きを考えるためです。症状から候補となる筋肉を絞り、動作や触診で普段の痛みとのつながりを確認します。
首や肩を押したときに、いつも困っている腕の痛みが再現される。 その反応は、筋肉の関与を考え、施術するポイントを選ぶための情報になります。
トリガーポイント鍼療法では、こうして症状との関係を確認したポイントへ鍼を行い、痛みの軽減を目指します。施術後には、最初につらかった動作や姿勢をもう一度確認し、その変化から次の施術を組み立てます。
画像の結果に、症状の出方を重ねて考える
痛みには、筋肉や関節などからの刺激に加えて、それを受け取る神経系の働きも関わります。痛みの調整が変化すると、小さな刺激を強く痛く感じたり、通常なら痛くない刺激で痛みが生じたりすることもあります。
そのため、画像で確認できる組織の状態と、実際の痛みの強さが一致するとは限りません。
当院では、筋肉の働きや関連痛の知識をもとに、どこへの負荷や刺激が普段の症状につながるかを確認しています。筋肉・筋膜が関与する痛みに対しては、トリガーポイント鍼療法が有効な選択肢の一つです。